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がん治療に取り組む医療関係医者の皆様へ。その治療の先にあるものはなんですか?がん治療に前向きに取り組む患者の皆様へ。その治療が終われば苦しみからは解放されますか?サバイバーが増えれば増えるほど、多彩になっていく不安と苦しみ。がん患者の旅に終わりはなく、それに最後までつきあってくれる人は……いったいどれだけいるのでしょうか?<ワケあり患者・小春>
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 朝、カード会社から電話がかかってきた。
 保険の勧誘らしい。
 いらないと言ってるのにしつこく食い下がる。
 「保険、入れないんですよ、私」
 「いえ、大丈夫です。過去5年以内にがんとか大きな病気をしていなければ…」
 「今、がんなんです(-_-) 」
 「!!………た、大変失礼いたしました。(ガチャン! ツー、ツー、ツー)」
 おいおい、それで終わりかよ。
 「わかりました。では5年後にまたおかけします」くらいのオチつけてよ〜。

 9月1日。
 6回目の鍼に行く(四ツ谷先生の治療は3回目)。
 毎回、治療が終わったときに皮膚の上からノギスでしこりの大きさを計測するのだが、この日は13×10mmだった。
 もちろん、エコーやCTで計測する数値とぴったり一致はしないだろうが、同じ計測方法で毎回少しずつ小さくなっていることはたしかだ(前回、8/25に行ったときは15×10mmだった)。

 今日は四ツ谷先生におそるおそる「あのー、しこりが小さくなったのはピルをやめたせいなんでしょうか」と聞いてみたが、「そんな単純なものじゃないよ。そんなことで小さくなるなら苦労しないよ」と一笑に付された。
 まあ、そう言うだろうなーとは思っていたが、私もピル説は疑問。
 たしかにやめた直後は多少影響もあるだろうが、もうやめてから1ヶ月半もたつのにまだじわじわ縮小しているのはピル中止のためだけとは思えない。
 
 そもそもホルモン補充の治療用には中用量ピルが使われるのが普通(だから保険がきくのは中用量のみ)なのだが、私は副作用が心配なので低用量ピルを選んだ。
 低用量ピルは基本的に健康な女性が飲むものだから、補充されるホルモンは必要最小限におさえられている。そのため、副作用も中用量ピルに比べたら桁違いに軽い。
 保険が効かないのは痛かったが、やはり副作用は少ない方がいいので、まずは低用量を飲んでみて、症状が改善されないようだったら中用量を飲むことにした。
 結果的には低用量でも充分効果があったのでそのままそれでいったわけだが。

 なにが言いたいかというと、低用量ピルで補充される女性ホルモンはそれほどたいした量じゃないということ。
 乳がんの治療で使うホルモンを抑制する薬の強さに比べたらその影響は微々たるものだ。
 だとしたら、乳がんの治療で使う強力なホルモン剤でも完全にがんの大きさをコントロールできるとは限らないのに、低用量ピルで補ってる分が減ったくらいでそんなに劇的な効果があるんだろうか?という疑問がわく。
 ましてや、健康な状態で避妊のために飲んでいる人はプラスアルファのホルモンになるわけだが、治療のために飲んでいる人はマイナスからの補充になるので、その補充分がそこまで決定的な要因になるとも思えない。

 ただ、ピルをやめた時期と、鍼を始めた時期がなんとなく重なっているので、どちらがどの程度影響を及ぼしているのかがわかりにくいのは事実だ。
 そこで素人なりに考えてみた。

 女性ホルモンは卵巣で作られる。
 しかしいずれ卵巣の機能が低下してくると、今度は脂肪を使って女性ホルモンを作るようになる。
 卵巣を使って作り出す量に比べればわずかな量だが、これは生殖に使われるのではなく、健康維持(骨や代謝を健康に保つ働きが女性ホルモンにはある)のために使われる分なので、それほどの量はいらないのだ。
 乳がんの治療では、この脂肪で作り出すわずかなホルモンも容赦なくカットしていくわけだ。

 私は今まで、卵巣機能が低下している分、ピルでホルモンを補充してきた。
 つまり身体はなにもしなくても外から補充されるホルモンをあてにできた。
 ところが、7月17日から外からの援助が断たれた。
 当然、身体はあわてる。
 
 「どうしよう。なんで急に封鎖されちゃったんだろう。困るよー」
 「これからは自分たちでなんとかするしかないってこと?」
 「でも卵巣ももう引退しちゃったし。エストラジオールなんてどうやって作ったらいいんだよ!」
 「卵巣にきいてみようか?」
 「だめだ〜。こいつもう起きねえよ」
 「今さら自給自足って言われてもねえ」
 「無理だよ。減反政策しちゃってるし」

 この状態が、私の脳内で再生された先日の「エストラジオール5以下状態」だ。
 しかし、これは一時的なパニックだろう。
 彼らはやがて気づくはずだ。

 「そうだ。脂肪があるじゃないか。こんなにたくさん!」
 「そうだよ。これを使ってなんとかできないかな」
 「できねえよ。脂肪はただの脂肪だ」
 「いいえ。できるかもしれません。私がなんとかやってみるわ」
 「誰だ、おまえ」
 「私の名は……アロマターゼ!」

 こうして、救世主アロマターゼは、脂肪を使って男性ホルモンを女性ホルモンに変換する技を会得し、私の身体は微量ながらも自給自足の道を見いだしていくのであった……完。

 つまり、もし今がピル中止によるホルモン欠乏状態で、そのためにがんが縮小しているのだとしても、その効力は永遠には続かないだろうということだ。
 放っておけば、「脂肪を使って自給する」という方法を身体が思いつき、またせっせと女性ホルモンを作り出すはずだ。
 そうなれば、アロマターゼの働きを阻害するホルモン療法を始めない限り、再びがんは増大傾向に転じるということになる。
 逆に言えば、ずーっと縮小傾向が続くならピル中止以外に理由があるということになる。
 やっぱりここは冷静にもう少し様子をみたほうがいいかも。

 医者も周囲の人たちも、「なぜそんなに長い間がんを放置して平気なんだ。さっさと治療すればいいのに」とやきもきしているだろう。
 しかし、今の私には確信がある。
 がんはこのまま小さくなっていくだろうという確信が。
 実際に小さくなっているから、というだけではない。
 前にも書いたが、「身体」が確信しているのだ。

 最初は「鍼で本当にがんが治った人がどのくらいいるのか、データがほしい」「西洋医学がどうだめで、東洋医学がどういいのか、もっと具体例をあげて説明してほしい」と思っていた。
 でも七瀬さんは強引なことはあえて言わず、「迷うのはよくわかるけど、そのうちに身体が決めてくれますよ」と私に言った。
 その意味が最初はわからなくて混乱したが、今は「これか!」というのがわかる。
 と同時に、「東洋医学にデータを求めても意味がない」ということもわかった。

 西洋医学の考えにどっぷり浸かった頭にとっては、なにかを信じるときにまず「データ」を頼りにしたくなる。
 たとえばここに100人の乳がん患者がいるとする。
 この100人にAという薬を飲ませたら5年後に10%が再発しました。
 一方、薬を飲まなかった乳がん患者100人については、30%が再発しました。
 だからAという薬を飲めば再発率は3分の1になりますよ。
 それはいい。飲もう。飲もう。
 簡単に言えば、データってこういうことだろう。
 医学用語でいうところの「エビデンス(科学的根拠)」ってやつだ。

 たしかに大雑把な傾向はデータから窺い知ることができるかもしれない。
 だが、それは所詮目安でしかない。
 人間は一人ひとり違う。
 「100人の乳がん患者に同じ治療をする」という時点で、すでに不確定要素満載だ。
 まったく同じ乳がん患者なんていない。

 もちろん、データをとるときは、「35歳以上(以下)」とか、「ホルモンレセプター陽性(陰性)」とか、「腫瘍径5センチ以上(以下)」とか、「リンパの転移あり(なし)」とか、さまざまなカテゴライズをするのだと思うが、そういった条件でどんなに細かく条件抽出したところで、まったく同じ条件の人間の集合体にはならないのだ。
 過去の病歴、投薬歴、家族の病歴、栄養状態、睡眠状態、運動習慣、生活習慣、ものの考え方、そうした因子が複雑にからみあって今の状態があるのだから、その違いに目を向けずに一緒くたに同じ治療をしたところで、同じ成果が上がるとは限らないだろう。

 だとしたら、上記のようなデータがどれだけ意味をもつのか疑問が起きてくる。
 「100人にAという薬を飲ませたら5年後に10%が再発しました」
 これは一見「90%の人は薬を飲んだから再発しなかった」ように見えるが、本当にそうだろうか。
 もしかしたら90%の人は薬を飲まなくても再発しなかった人かもしれない。
 10%の人は他の要素で再発したのかもしれない。
 他の要素を病院がどこまで把握しているのかといったら怪しいものだ。
 多くのがん患者は病院には内緒で「代替療法(東洋医学からサプリメント、健康食品など)」を併用している(だいたい病院はこういうものをいやがるので、正直に申告する人はほとんどいないだろう)。
 それを把握せずに西洋医学の影響だけで比較しても、それって意味があるのだろうか?

 また、この手の再発率とか生存率といった数字は、非常に短いスパンでしか出てこない。
 5年後の再発率というが、10年後はどうなのか。20年後は?……とつきつめていくと、結局最終的にはそれほど数字が変わらなかったりするケースも多い。
 なぜなら、長く生きれば生きるほど、後天的なリスク(病気が治ったあとにどういう生活を送り、どういうストレスを受けるのかなど)の影響が大量に加味され、なにが原因なのかわかりにくくなってくるからだ。

 それに、がんの再発はなくても、他の病気で亡くなる確率だってある。事故に遭う確率だってある。
 健康な人は日頃そんなことを考えていないから、生存率が100%でないという事実にまずギョッとするのかもしれないが、がん患者に限らず、「最後まで死なない人」はいないし、「明日生きている確率が100%の人」もこの世には1人もいないのだ。

 そう考えていくと、なにがどのくらい効くのか、なにがどのくらい原因になっているのかなんて、そう簡単に言い切れるものではない。
 たしかに、今現在、どんどんがんが増大し、目に見えて身体の状態が悪くなっている患者がいたとして、「治療できなければ余命はこのくらいだろう」というのは経験上「ある程度は」わかるかもしれない。
 しかし、少なくとも手術で目に見えるがんをとりきった患者が、この後何十年というスパンで再発するかしないか、転移するかしないか、何年生きられるかなんてことは、人間にもコンピュータにもわからないことだと思う。
 もしかしたら、治療をするかしないかよりも、もっと大きな要因がその人の生き方の中にひそんでいるかもしれないからだ。

 基本的に、がんは「自分で作り出したもの」だと思う。
 少なくとも、外から突然襲ってきた敵ではない。
 自分に害を及ぼすものであったとしても、もとは自分の一部であったことはたしかだ。
 それは唐突に変化したのではなく、なんらかの理由があって出現したはずで、変な言い方だが「人間にはがんを作り出す力がある」のだと思う。
 だとしたら、「人間にはがんを消す力もある」のではないだろうか。
 そんなに単純じゃないと言われるかもしれない。
 もちろん、誰もが治療なしで治るとは思わない。
 思わないが、潜在的な能力は誰でも持っていると私は思う。

 がんになった人の多くは「振り返ればがんになってもおかしくない出来事がその前の数年間にあった」と言う。
 私の場合は「訴訟」だったと思う。
 原因は放射線の影響もあると思うし、生活習慣にもあるかもしれないが、ひきがねとなったのは明らかに「訴訟」だと思う。
 自分でもわからないうちに自分を追い込んでいたんだということが今はよくわかる。
 だからといってそれは避けられた道ではないのだが。

 でもがんがみつかったことで、今までの一連の出来事が一気にダーーーッとつながって見えてきたことはまぎれもない事実だ。
 よく「がんになってよかった」「がんは恵みだった」と言う人がいる。普通の人は「なに言ってんだよ。いいわけないじゃん。わけわかんない」と思うかもしれないが、これは未来の指針ができたという意味ではないだろうか。
 がんとともに生きることができるなら、それは「恵み」にもなると私も思う。

 セカンドオピニオン残り1件。
 だんだん、行くべき道が見えてきた。

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お読みになる前に…
年が明けて、三度目のがんがみつかってしまいました。
25年間で新たながんが3回……さすがにこれはないでしょう。

がん治療ががんを呼び、また治療を勧められてがんを呼び……はっきり言って「がん治療」成功してないです。
私は「生きた失敗作」です。
医者は認めようとしませんが、失敗されたうえに「なかった」ことにされるのは耐えられません。

だから息のある限り語り続けます。
「これでいいのか?がん治療」……と。

漂流の発端をたどると1988年から話を始めることになります。
西洋医学の限界とともに歩んできた私の25年間をご覧ください。

別サイト「闘病、いたしません。」で第1部「悪性リンパ腫」から順次更新中です。
このブログでは第4部「乳がん」から掲載されています。最新の状況はこちらのブログで更新していきます。
プロフィール
HN:
小春
性別:
女性
職業:
患者
自己紹介:
東京都在住。
1988年(25歳〜26歳)
ホジキン病(悪性リンパ腫)を発病し、J堂大学附属J堂医院で1年にわたって化学療法+放射線治療を受ける。
1991年(28歳〜29歳)
「再発」と言われ、再び放射線治療。
1998年(35歳)
「左手の麻痺」が表れ始める。
2005年(42歳)
麻痺の原因が「放射線の過剰照射による後遺症」であることが判明。
2006年(43歳)
病院を相手に医療訴訟を起こす。
2009年(46歳)
和解成立。その後放射線治療の二次発がんと思われる「乳がん」を告知される。直後に母ががん転移で死去。
迷いに迷ったすえ、西洋医学的には無治療を選ぶ。
2013年(50歳)
照射部位にあたる胸膜〜縦隔にあらたな腫瘤が発見される。
過去の遺産を引き続き背負って無治療続行。
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