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がん治療に取り組む医療関係医者の皆様へ。その治療の先にあるものはなんですか?がん治療に前向きに取り組む患者の皆様へ。その治療が終われば苦しみからは解放されますか?サバイバーが増えれば増えるほど、多彩になっていく不安と苦しみ。がん患者の旅に終わりはなく、それに最後までつきあってくれる人は……いったいどれだけいるのでしょうか?<ワケあり患者・小春>
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 9月5日。
 この日は瀬田クリニックのミニセミナーに参加した。
 瀬田クリニックは、「免疫療法」を行っている専門クリニックである。

 西洋医学のがん治療といえば、俗に「3大治療」と呼ばれる「手術」「抗がん剤」「放射線治療」の3つである(乳がんや前立腺がんなどはこれにホルモン療法が加わるが、基本的にはこの3種類)。
 「免疫療法」は、この3つについで第4の治療法と言われている注目のがん治療だ。

 がん細胞は、健康な人間の体内でも毎日生まれているという。
 にもかかわらずがんにならないでいられるのは、免疫細胞の地道な働きによって増殖が抑えられているからだ。
 しかし、なんらかの理由で免疫機能がガクンと弱ってしまったとき、増殖する力が抑える力を上回り、検査で認識されるところによる「がんデビュー」となる(統計によると、一生のうち、2人に1人は「がんデビュー」するらしい。がん患者は決して「一部のマイノリティー」ではないのだ)。

 つまり、理論上は弱った免疫力を再び強化させればがんはひっこむわけだが、じゃあどうやって強化させるのか?と言われたら西洋医学にはなすすべがないのが実情だ。
 もちろん、東洋医学的にはいろいろ方法があるのだが、それはエビデンスがないので(笑)、医者は免疫に関しては「手が出せない」「各自に任せる」というのが正直なところだと思う。
 そもそも免疫のシステムにはわからないことがまだまだ多いし、「こういうときにこういう細胞がこういう働きをする」というところまではわかっていても、「どういうときに働かなくなるのか」「働かなくなったときにはどうすれば活性化できるのか」はわからないらしい。
 わからないから、そこは触れないようにして、とりあえず目に見えるがんのかたまりを3大治療でたたきつぶす。というのが西洋医学のやり方だ。

 しかし、皮肉なことに、この3大治療こそが、もっとも「免疫力」を落とす「免疫の敵」なのだ。
 ためしに医者に聞いてみるといい。
 「抗がん剤や放射線って、なんだかんだ言っても免疫落としますよね? 身体弱らせますよね?」
 これに対して「そんなことはありません」と言い切る医者はまずいないだろう。
 せいぜい「まあ、でも治療しないとどうしようもないでしょう。しょうがないですよ、がんなんだから」と話をそらす人がほとんどだと思う。
 「まあでも」っていきなり言い訳から入るのを見ても、医者自身「免疫落とす」と認めているのは明白だ。
 認めてはいるけれど、それに目をつぶらなければ治療ができない(=なすすべがない)から「しょうがない」という言葉が出てくるのだ。
 「がんなんだからしょうがない」。
 そう言われてしまったら、患者のほうも「そうだよな。がんなんだから贅沢言ってる場合じゃないよな」という気分になってしまう。
 しかし、本当に3大治療は「しょうがない」んだろうか?

 あるブログ(現役の医者が開設している)で、「患者さんからよく『抗がん剤はこわいからやりたくない』という声を聞くが、それは誤解だ。たしかに抗がん剤はつらい症状が出るかもしれないが、それは一時のことだ。治療が終われば元に戻るのだから頑張ってやってほしい」というようなことが書かれていて愕然とした。
 そのブログを書いているドクターは本当に患者のことを親身に考えている人に見えたし、善意でその記事を書いているのもわかるだけによけいにがっかりした。

 残念ながら、問題は「一時的なつらさ」にとどまらない。
 私も昔は(がんだとは知らなかったにせよ)「今この瞬間の苦痛を耐えぬけば健康が取り戻せる!」と信じ、歯を食いしばって治療に耐えた。
 にもかかわらず、度重なる治療のダメージは、結局重い後遺症と二度目のがんを生んだ。
 私だけではない。
 どんなに念入りに治療を重ねても、再発したり、身体中に転移したりする人はあとを断たない。
 これはなぜなのか?

 医者に言わせれば「治療したにもかかわらず」という文脈になるのだろうが、東洋医学の文脈では「治療したからこそ」である。
 実際、「がんになったのに治療を受けない人」はほとんどいないわけだから、治療を受けた場合と受けない場合で公正な比較をすることはできないはずだ。
 だからどっちの言い分も「証明」はできない。
 しかし、免疫が落ちればがんになるとわかっていながら、がんを治すために免疫を落とす治療をやり続ける西洋医学にはやはり不信感を持たざるをえない。

 抗がん剤も放射線も、「治療後に身体が勝手に回復してくれる」ことをあてにして、身体をいじめぬく。
 でも身体だって不死身ではない。
 表面上は回復したように見えても根っこのダメージはいつまでもひきずることになる。
 たとえはあまりうまくないが、これは腰の悪い人にどんどん重い荷物をもたせながら、その一方で腰に鎮痛剤を注射し続けるようなものではないか。
 
 前置きが長くなったが、そんなことを考えているうちにいきあたったのがこの「免疫療法」である。
 今のところ、これをやっている病院はまだまだ少ない。
 印籠にあたるエビデンスがないし、保険もきかないため、行っているのは専門クリニックが中心となっている。
 医師の間でも「免疫療法? なにそれ。うさんくさ〜」と思ってる人が多数だろう。
 そこまで露骨な態度でなくても「そういうものもあるようですが、エビデンスがないから効くかどうかわかりません」という医師がほとんどだ(実際、今回セカンドオピニオンでまわった医師全員がこういう答え方だった)。
 それでも「免疫療法」に活路を見いだし、訪ねてくる患者はあとをたたない。
 それだけ「エビデンスのある治療」だけでは治らない患者が多いってことだ。

 たしかに他の民間療法と同じく、免疫療法と一口にいってもあやしげなところもあるだろう。
 私が、数多くの医療施設の中で瀬田クリニックを選んだのは、地味だけどまじめに取り組んでいるという印象があったからだ。
 資料も取り寄せてみたが、担当医に説明するときのために…と「医療関係者向けの資料」も同封されていたことに感心した。
 たとえば東洋医学や民間療法なら、病院の担当医に黙ってこっそりやることもできるだろうが、この免疫療法に関してはそれができない(一応西洋医学の医者が行う治療なので)。
 しかし、実際はこの「担当医に理解してもらうこと」が最大の難関になる。
 「うさんくさ〜」と思っている医師相手に、素人が「免疫療法とはなんぞや」を説くのは並大抵の作業ではない。
 そんな患者のために「対ドクター資料」を用意してくれているのだ。

 なかなか行き届いているじゃないか。と思う一方で、専門外のこと、標準治療外のことに対する一般の医師の関心の薄さにはびっくりする。
 忙しいのはわかるが、患者が探してきた治療法についてちょっと調べてみるくらいの姿勢があってもいいんじゃないか。
 まあこのあたりの事情を見ただけでも、免疫療法というものが医学界でどういう位置づけにあるのかが想像できるが、セミナーに参加してみてその思いはいっそう強くなった。

 一言で言うと、免疫療法とは「がん細胞を消滅させる力を持つ免疫細胞」をとりだし(方法は一般の採血で)、特殊な機械で増殖させ、数週間後に再び体内に戻すという方法だ。
 自分の身体の中にあるものしか使わないので副作用もほぼゼロだとのこと。
 というと良いことづくめのようだが、そう簡単な話ではない。
 セミナーの中で、「免疫療法を受けた人の予後」というデータが出されたが、なんと「完全消失した人が1%」「進行した人が44%」という数字だった。
 これを見たら誰でも「なんだよ。全然効いてないじゃん…」と真っ暗になるだろう。
 が、そこがデータのトリックなのだ。

 この調査の対象になっている人は、なんらかの事情で手術ができなかった人である。
 なぜなら、手術でがんを取り除いたあとに治療を行っても、効果があるのかどうかはわからないから。がんがそこに見える状態で治療を行って、初めて「進行したか」「現状維持か」「縮小したか」が判断できるからである。
 このデータの対象者はもともと「そのままなにもしなければ進行するのが決定的な重篤な患者たち」であり、そうなると44%というのは決して多い数字ではなく、むしろ「44%しか進行しなかった」という評価になる。

 だったら、そんなわかりにくいデータ出さなければいいのに、なぜか出してしまう瀬田クリニック。
 そしてフォローするわけでもない先生。
 口数が足りないというか、あまり商売上手とはいいがたい。
 先生自身はとてもまじめで誠意があるように思ったが、失礼ながら「なんか損な役回りをひきうけちゃうタイプだなー」という印象を受けた。
 なによりも患者以上に疲れきった顔色をしていて、覇気がないのが気になった。
 セミナーに参加している患者さんはいわばがん難民化している人たちで、みんな切羽詰まっている。こういう切羽詰まってる人たちから常に「これは治るのか」「これはどうなんだ」と食いつかれて疲労困憊の態といった感じだった。
 正直、先生の免疫状態が心配になった。

 パンフレットによれば「初期の人にも使えるし、進行して他の治療が効かなくなった人にも使える」という話だったが、前述したように、現実は治療を受けにくる患者のほとんどが末期の人だ。
 セミナーに来ている人も「もう余命が尽きかけている」「本人は治療を受けにいく体力もない状態」「難治性のがんと診断され、治療法がないと言われた」といった人ばかりだった。
 でも、「免疫療法」というくらいなんだから、あまりにも弱った状態(=免疫力が落ちきっている状態)で治療を受けても劇的な効果は望めないのではないだろうか。
 先生自身「免疫療法は、手術をした直後の補助療法としてやるのが一番理想的」と話している。

 にもかかわらず、初期の状態で来る人はほとんどいなくて、3大治療をやり尽くして免疫が落ちまくっている人ばかりが来るのはなぜか?
 「保険が適用されない免疫療法は値段が高いから、他に治療法がまだある段階ならまずそっちを受ける」というのもひとつの理由だろう。
 しかし私は「担当医が免疫療法を受けさせようとしない」という理由も大きいのではないかと思う、

 誰だって少しでも体力のある患者を治療したいだろう。
 初期治療ならばどんな治療でも患者は耐えられるし、効果もあがりやすい。治療→再発・転移を繰り返すほど、治療はしにくくなる。
 だとしたら、治療しやすい患者を医師は手放したがらないだろう。
 「免疫治療をやってもいいが、抗がん剤とセットでないとだめ」
 「免疫治療をやってもいいが、初期治療でやるのは不可」
 そういう条件をあげている病院の話も聞いた。
 言い方は悪いが、そういう病院の姿勢は「失敗作をおしつけている」ようにしか私には見えない。

 とはいうものの、これからのがん治療において、「免疫」が大きなキーワードになるのは間違いないと思う。手術・抗がん剤・放射線治療の3大治療は今後見直しや方向転換がはかられるようになってくるだろう。 
 もちろん、今の「免疫療法」はまだまだ発展途上であることはたしかだ。
 肝心なところは「身体任せ」という印象が否めない。結局、どんなに頑張っても免疫体系のすべてをコントロールできるわけではないからだ。

 Tリンパ球を増やせばがん細胞を殺してくれる。
 理論上はそうなのかもしれないが、はたして試験管上で働いたリンパ球は体内でも絶対に同じ働きをするのだろうか?
 体内で自然に増えたリンパ球と、よそで勝手に増やしたリンパ球は同じように働くのだろうか?
 
 「おまえなんか試験管リンパ球じゃねえか」
 「どこの馬の骨ともわからないリンパ球に大事な仕事を任せられるかよ」
 「おまえらみんな同じ顔してて気持ち悪いんだよ」
 
 などという迫害を受けたりはしないのだろうか。
 迫害を受けたリンパ球はグレてがん細胞の手先になったりしないだろうか。
 体内の免疫体系はひとつの宇宙であり、免疫細胞は、意味があって増えたり減ったりしているはずだ。
 その意味がわからないまま勝手に増やされたり戻されたりしても、受け入れる身体が了解しなければやっぱり思うようにはいかないのではないか。

 最初は「免疫療法いいかもしれない」と思っていたのだが、同じ目的ならば、今は鍼治療のほうがいいように感じられてきている。

拍手[3回]

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お読みになる前に…
年が明けて、三度目のがんがみつかってしまいました。
25年間で新たながんが3回……さすがにこれはないでしょう。

がん治療ががんを呼び、また治療を勧められてがんを呼び……はっきり言って「がん治療」成功してないです。
私は「生きた失敗作」です。
医者は認めようとしませんが、失敗されたうえに「なかった」ことにされるのは耐えられません。

だから息のある限り語り続けます。
「これでいいのか?がん治療」……と。

漂流の発端をたどると1988年から話を始めることになります。
西洋医学の限界とともに歩んできた私の25年間をご覧ください。

別サイト「闘病、いたしません。」で第1部「悪性リンパ腫」から順次更新中です。
このブログでは第4部「乳がん」から掲載されています。最新の状況はこちらのブログで更新していきます。
プロフィール
HN:
小春
性別:
女性
職業:
患者
自己紹介:
東京都在住。
1988年(25歳〜26歳)
ホジキン病(悪性リンパ腫)を発病し、J堂大学附属J堂医院で1年にわたって化学療法+放射線治療を受ける。
1991年(28歳〜29歳)
「再発」と言われ、再び放射線治療。
1998年(35歳)
「左手の麻痺」が表れ始める。
2005年(42歳)
麻痺の原因が「放射線の過剰照射による後遺症」であることが判明。
2006年(43歳)
病院を相手に医療訴訟を起こす。
2009年(46歳)
和解成立。その後放射線治療の二次発がんと思われる「乳がん」を告知される。直後に母ががん転移で死去。
迷いに迷ったすえ、西洋医学的には無治療を選ぶ。
2013年(50歳)
照射部位にあたる胸膜〜縦隔にあらたな腫瘤が発見される。
過去の遺産を引き続き背負って無治療続行。
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